「眼をちゃんと開けて、自分がされていることを見ていなさい。
何のためにこんな格好に縛ったと思ってる。」
顔を上腕に押し付け、ぎゅっと目を瞑っていた月はぐいと真上を向かされる。
涙でぼやけた視界の目の前に、恥ずかしい光景がつきつけられる。
激しい苦痛に縮み上がった性器と、その奥に屹立している醜悪な黒い道具。

「奥まで入れるから、どんな感じか説明しなさい。」
ローションが少しだけ足された後、再び道具が押し進められる。
「…痛い…です」
「それはもういい。聞かなくてもわかってる。」
「奥が…凄く拡がってる…」
「それから。」
「何もしてないのに…勝手に押し返すみたいに…動いてる…」
満足に息を吸えないせいで途絶えがちになる言葉を、月は泣きながら一生懸命繋いでいく。

「今度は眼で見えることを説明して。」
「だんだん…外に出てるところが…短くなって…」
「そうだね、だいぶ入ってるね。半分くらいかな。あと7,8cm。
どう?そのくらいの長さ入ってる感じ?」
体感的にはもっと長いものが体内に収まっているようだった。
「ぶつかってる…これ以上…入らない…みたい…」
「体をきつく縮めてるから、腸も折れ曲がってる、だから入り難いんだよ。
でも入り難いだけで…」
道具の侵入角度が変わり、ずぶりとほとんど根元まで突き入れられた。
「…入れればちゃんと入る。」
無理矢理広げられ、めり込む道具の突起に歪む後孔の痛みに、内臓を抉られる疼痛が加わる。

「くっ…! はあ、ああ…」
痛いと言えば、また、叱られる。


根元を軸に中でぐりぐりと道具に回転がかかり始めると、腹の疼痛はより強くなり、全身から脂汗が滲み出てくる。

月は顔を歪ませ、全身に力を篭らせ、低い声で呻き続ける。
性的興奮由来の反応ではないと判断した奈南河は、道具を半分ほど引きずり出す。
圧迫痛が幾分か薄れ、詰めていた息をはぁっと吐き、体の緊張を少しだけ解いた、その時。

びくんと小さく下半身が跳ねた。
道具が退いた時に、先端と胴体の境目の大きく張り出した部分が、月の最も弱い所を手荒く擦って通り過ぎたのだ。
「あいかわらず、わかりやすいな月は。
たった今まで痛くて死にそうって顔してたのに。」

中途半端に埋め込んだまま、本体後部に付いているスイッチを無造作にONにし、奈南河は手を離した。
「━━━っ!!」
ジジジジと囁くような振動音が響く。

支えを失った道具がそれ自身の重みで背中側に大きく傾き、作用点となった先端が小刻みに震えながら、前立腺にぐいぐいと押し付けられる形になった。
こじ開けられる後孔の痛みも、抉られる内部の痛みも未だに消えてはいないが、それを凌駕するほどの衝動が背筋を駆け上ってくる。
「ああ…あ…あふ…んっ…んんっ…」
足の甲がピンと伸ばされ、足の指の一本一本がこれ以上曲げられないほど強く折り畳まれる。
鳥肌の立つような快感の波に身をゆだねようとした瞬間、全身に力が入ったせいで、じりじりと道具が押し出されてしまった。

「あ…」
待ち続けてやっともらえた甘い菓子を、ほんの一舐めしただけで取り上げられてしまった小さな子供のように、月はかすれた切なげな声で小さく啼いた。
太い先端が釣り針のかえしのような役割りをして、かろうじて内部に留まっている。


視界が真っ白に染まるほどの衝撃から醒めた月は、下腹部の熱い塊に気付いた。
何かが自分の体にぴったり張りついている、と感じるのとそれが反り返った分身であるということを悟ったのとは、ほぼ同時だった。

道具はだらしなく垂れ下がり、篭った振動音を立てて出口付近をじんわりと苛んでいる。
直腸が外に向けてひっぱられる不快感と、無理な角度に押し広げられる後孔の痛み、それらをすべて切り捨てて、月の体は貪欲に先ほどの余韻を掴んで離さない。

そこへ奈南河の手が伸びる。
「さっきの、そんなによかったんだ。ほら。こんなになってる。」
細くて綺麗な指を先端に添え、ぐっと体から持ち上げて手を離すと、月の分身はぺしっと情けない音を立てて下腹を打った。
「ちゃんと見て。どうなってる?」
「……」
「説明。」
再度促されて、やっと目を開ける。
「おっきく…なってる…」
「それだけ?」
「硬く…なって… それから…」
その先は口にできず、言いよどむ。
鈴口から淫らな透明な液体が糸を引いて腹に伝っている。
「…液が流れて…います」
なるべく事務的な言葉を選んで、その惨めさを紛らわそうとする。
しかしそれは、奈南河の次の言葉で木っ端微塵に打ち砕かれた。
「月は苦しい格好に縛られて、お尻に痛くて泣くほど大きなバイブレーターを無理矢理入れられて、どうして気持ちいい液がそんなにいっぱい出てくるの?」

涙が滲み、口がへの字に歪む。
情けなさと恥ずかしさで再び泣き出した月とは裏腹に、奈南河に弄ばれている分身は、更に強い刺激を求めるかのように打ち震え、後から後から溢れ出てくる液体にまみれていた。

「やっぱりお仕置きにならないね。しょうがない子だ。
こっちの方が辛いかな?」
奈南河はスイッチを切って、張り切り濡れそぼった分身からも手を離す。
「いや…あ…」
性器への直接的な刺激に喘ぎ始めていた月は、またしても悦びの持って行き場を奪われ、じらされて切なげに身を捩った。


道具が再びゆっくりと押し込まれる。
「前は触らないで、お尻だけでいけるように工夫してごらん。
ちゃんといけたら、お仕置きはおしまい。」
奈南河はベッド横に椅子を運び、深く腰掛けて足を組んだ。
「ここで見ていてあげるから。」

時間だけが虚しく過ぎていった。
じっとりと汗が滲み、膝の裏が引き攣ってわななくように震えだす。
窮屈な体勢の苦痛の方が勝ってしまい、どうしても下腹部に集中できない。
押しつぶされた肺が悲鳴を上げている。

微妙な角度や位置の違いからか、先ほどのような快感が得られず、押し出してしまわないように神経を使いながら、一生懸命腰を振って道具をいいところにあてようとするが、なかなかうまくいかない。
手っ取り早く絶頂を呼び寄せようと、つい無意識に性器に手を伸ばすが、奈南河は無言で月の手を阻み、ヘッドボードに戻してしまう。

耐えかねたように、月は口を開いた。
「先生…」
小さく枯れた声で、縋るように訴える。
「お願い先生、もう…許して…くださ…」

奈南河は立ち上がって、月の顔を覗き込んだ。
「手伝って欲しい?」
スイッチを弱にいれる。仕事を与えられた道具がジジジジと低く唸り、輪郭のぼけた刺激が下半身を包む。しかし、月の意識がそれを一生懸命かき集めても、疲弊しきった体に昂りを生み出すまでには至らない。

「…っと…」
「ん?」
「もっと…強く…」
「お願いはちゃんと、だよ」
「もっと、強く、してください…」
「何を?」
「動くのを…もっと強くして…おねが…」


「動くのって、何が?」
「…」
「ちゃんと言いなさい」
「バイブ…バイブレ…タ…の」
「それは、どこにある?」
「僕の…中」
「もっと詳しく言いなさい」
「僕のお尻の…お尻に入ってる…バイブレー…ターを…」
「どうしてほしい?」
「動くのを…もっと強く…」
「何故動くのを強くしてほしいの?」
「気持ち…いいから」
「気持ちいいのは、好き?」
「……はい…」
「じゃ、全部繋げて言ってごらん。『僕のお尻に入っているバイブレーターを強く動かして、
もっと気持ちよくして欲しいです。』」
月は言われたとおりに哀願した。
途中で途切れた、声が小さい、言葉が抜けたとダメ出しされては、何度も何度も言わされる。

「それじゃ、自分でやりなさい。」
奈南河は月の右手に手を添えて、道具に導き、スイッチに触れさせる。
「これがスイッチ。いいね。そしてこう動かすと、震えが強くなるからね。
その横にあるこのボタンは、震えるんじゃなくて、動く方。わかる?」
首を持ち上げる力はすでになく、天井を向いたままこくりこくりとうなずく。

もどかしげにスイッチを手探りし、月は小さなツマミを確認すると振動を少しだけ強める方向へ動かした。つもりだった。
「ああっ やあああっ!!」
突然、ぜんまい仕掛けのような音を立てて、道具が跳ねるように暴れだす。
全く予期しない動きでバイブレーターの胴体がくねり、その先端が激しく前立腺に叩きつけられる。
「いやあっ あぁぁああぁああーっ…」

悲鳴がすうっと消えた瞬間、ぼとっと音を立てて道具が排泄された。
何か熱いものが顔に降り注ぐ。それが何か考える間もなく、失神した。


気付けば足首の拘束が解かれ、月はベッドに長々と身を横たえていた。
ようやく全身に血が巡り始め、それが返ってあちこちの痺れを浮き立たせている。
かろうじて首を横に向けると、添い寝をするような体勢で片肘をつき、月の髪にゆったりと指を通している奈南川と目が合った。

「スイッチ間違えたでしょう。最後すごかったね。お尻だけでいけて偉かったよ。
上手にできたから、約束通りお仕置きはこれでおしまい。おつかれさん!」
全身を弛緩させてぐったりと転がっている月を抱きしめ、幼子をあやすようにぽんぽんと頭を軽くたたく。

「ここまで飛んだの、わかった?」
月の頬を指で優しくぬぐうと、そのまま月に舌を出させ、舐めとらせる。
顔をしかめた月に、昨日ほど濃くないみたいだけど比べてどう? 味、ちがう? と、からかうように小さく笑った。

「お尻、見せて。」
まだ体が思うように動かない月をかかえてうつ伏せに返し、双丘を左右に押し広げ、時間をかけて後孔の具合を確かめる。
「大丈夫、切れてないよ。少し赤くなってるから薬塗っておこうね。」
襞をのばすようにして軟膏が塗られると、少し痛みがあったが、それほどではない。
あんなに太いものを入れられても、受け止められる体になってしまった。
ほんの刹那、足元が崩れていくような不安感が頭をよぎったが、今は、疲労さえもなにか心地よく感じられるほどの開放感の方がまさっている。
いかにも機嫌よさそうに、手際よく月の後始末をはじめた奈南河の様子にも安心した。
 
顔と胸に撒き散らされた精液と、下半身のあちこちに付着したローションをウエットティッシュで丁寧にぬぐってしまうと、奈南河は月を膝に抱き上げ、向かい合わせに抱きしめた。
「やっぱりお仕置きが好きなんでしょう。」
月は顔を奈南河の肩に押し付けたまま、力なく首を左右にふっていやいやをする。
「昨日も酷いことされたのに、出たんだよね。」
今度はもっとはっきりと頭を振ってみせる。
「あ、ごめんごめん、昨日余計に感じたのは、誰かに見られそうだったからだっけ。」
さらにきつく抱きしめられ、頬と頬をピッタリくっつけた状態で意地悪く頭を押さえ込まれ、今度は首を振ることができない。

抱きしめたまま、続けて奈南河は呟いた。
「月は本当に手のかかる子だ。
お仕置き、っていう理由がないと、月の心はこういうことを受け入れてくれないからね。」


奈南河は小さなペットボトルに入ったミネラルウォーターをわざわざグラスに移して運び、グラスを持つ月に手を添えて飲ませ、しばらくのあいだベッドで休ませた。
月が服を着るのをかいがいしく手伝い、シャツの喉元の第一ボタンまで優雅な手つきで留めてやる。
すっと触れるだけの甘い優しいキスをして、少年期特有の柔らかい頬の弾力を楽しむかのように頬ずりをし、再び唇をよせ、抱きしめる。

出口で最後に、
「次はもっと気持ちよくなれるように考えておくよ、期待しててね。」
と声をかけ、エレベーターの扉が閉まるまで見送っていた。

ふわふわと心もとない歩みでビルのエントランスをでた月は、まっすぐ家に帰る気には到底なれず、いつもとは反対のホームから繁華街へ向かう路線の電車に乗った。
週末の午後を賑やかな場所で過ごそうという人たちで電車はかなりの混雑である。
ドアと座席の間に立ち、疲れた体を壁に預けた。

「月は本当に手がかかる子だ」
「お仕置き、っていう理由がないと、月の心はこういうことを受け入れてくれないからね。」
あえて頭の中で繰り返してみる。
不思議なほど、胸の奥にすとんと落ちた。

鞄の底で携帯が震える。
急いで取り出して液晶画面を確かめると、明らかに業者広告メールとわかるタイトルが表示されている。
一瞬、がっかりしたような気がした。
何故。
僕は、何を…?

ドアの脇でぼんやり外を見ている月の心持ちも知らずに、電車は軽快に乗客を街へと運んでいく。

end




→エピローグ










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