エピローグ

モニターから拡がる光で、暗い部屋がぼうっと浮かび上がっている。
あごの下で手を組んだ男がデスクに座り、映し出される映像を凝視している。
モニターに映るのは、バイブレーターを体の中心に突き刺して、腰を振りながら言われたとおりの言葉を繰り返し、
悶えている二つに折りたたまれた白い肢体。

細身のめがねの奥の神経質そうな冷たい眼でそれをじっと見ている男・樹田はほうと溜息をついた。
「いいね、でもまだこんなもんじゃない、相当のポテンシャルを秘めているはずだ。この子は。」

デスクに手をついて体重をかけ、同じようにモニターを見ていた奈南河は、満足そうに頷く。

「で、抱かないのか?」
「ああ、今は与えているだけ。」
「もったいないねえ。」
「そんなことないさ。」
「俺なら、後ろ手に拘束してプラグを埋め込んでデスクの下に放り込んで一日中咥えさせておくけどね。」

わかってないな、とでもいうように、奈南河は軽く首を横に振ってみせる。

「いいかい、あの子があの子自身に服従する過程を楽しめるのは、今この瞬間だけなんだ。性的快感を徹底的に拒もうとする心と、狂おしいほど貪欲に悦楽を求めようとする体、その乖離を自ら埋めようとする姿を、髪の毛の先から足の指の一本一本まで観ていたいんだ。あの子が快楽にひれ伏して、自ら体を開くようになるまで。」

モニターの月がバイブレーターに手を伸ばし、嬌声を上げて喉を反らせる。
「あの子を抱くのは、あの子が『抱いてください』って言った時になると思うよ。」

なるほどね、と樹田はモニターを見たまま肩をすくめた。
「で、こんなもの見せつけるためだけに呼んだわけじゃないだろ?」
体液にまみれ、ぐったりと動かない月を親指で指し、奈南河を振り返る。

「そろそろ次の段階に進めたいんだ。今度三人で楽しもうかと思ってね。」
樹田は動画の再生ボタンをクリックした。
バイブレーターを持ってベッドに近づく奈南河の背中のアップから、3度目の再生が始まる。
「ああ、是非呼んでくれ。この子の都合に合わせるよ。
俺はおしゃぶりを教えてあげたいね。」


エピローグ end






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