パタンとドアの閉まる音がする。
どうやら買出しから帰ってきたようだ。
部屋の中は静かすぎるせいか、買い物袋をがさごそと探る音が少し耳障りだった。
「月くん、ビール飲まない?」
「こんなときにお酒なんて不謹慎ですよ」
月は振り返りもせず答えた。
「でもたまには息抜きも必要だろ?月くんも以前にそう言ってたじゃないか」
「そうですけど今は模木さんがSPKに滞留したまま戻ってきていません。
 お酒は模木さん達が戻ってきてからにしましょう」
模木はSPKに出向いたままニア達とともにNY(ニューヨーク)にいるはずだ。
いや、もう拠点を移動してしまい、どこにいるかは判らない。
相沢と伊出は状況を確認するために事件のあったビル周辺に滞在している。
日本捜査本部が拠点としているLA(ロス)のホテルの一室には今、月と松田しかいなかった。
「逆に相沢さん達がいない時だからこそ飲もうって言ってるんだよ。
 先輩たちがいるときじゃ飲みたいなんて言えなかったし」
ここでは相沢が一番年上の先輩格だった。
捜査指揮権自体は若輩の月にあったがだからといって規範的なことに関しては口出しできるものではない。
アメリカでの異例の捜査とはいえ就業中であるのに変わりは無かった。
相沢は警察官らしく堅物でもあったため捜査として使っているこの部屋で酒を飲むような振る舞いはしなかった。
とはいえ、他にどこへ羽を伸ばすような場所もなく、四六時中気を張り詰めているのも松田の言うとおり気疲れするだろう。
LAとNYでは時差がそれほどないため深夜に連絡がくることはほぼ無いであろうことを考慮して夜中は睡眠を取っていたが、それでも月はあまり寝ていなかった。
休憩は松田と交代で取り、SPKから連絡があったときは必ず月が出ることになっている。
「じゃあ松田さんだけで飲んでいてください。僕は珈琲でも飲んでます」
「え〜……一人で飲むのはなんだか白けるなあ」
「僕はニアからの連絡がいつあるか分からないので。
 その時に酔っていては相手に不審がられるでしょう」
「月くんはやっぱり真面目だなー」
缶ビールのプルトップを開ける音が聞こえる。
ぐびぐびと喉を液体が嚥下する音すら聞こえてきた。
「ねえ、月くんてさー、エッチな本とか読んだりするの?」
「……いきなり何ですか?」
月は密かに調べていたキラ関連の番組に目を通す手を止めた。
もしものときのためにキラの代行者となり得る者をリストアップしていたのだ。
松田相手なら少々のことは感ずかれまい。
そういう意味では今のこの状況は月にとって有難かった。
「だってさー、月くんでもそういうの興味あるのかなーって思ってさ」
「松田さん、酔ってるんですか?」
月は松田を見遣った。
特に顔が赤くなっている様子もなく、傍から見る限り酔っているかどうかはよく分からない。
「酔ってないよ。だって、月くん真面目だから、そこのところどうなの?」
「そんなこと、今はどうでもいいじゃないですか」
沈黙が流れた。気まずい、とまではいかないまでも白けた空気が漂う。
「実はさー、僕見たんだよね」
「……何をですか?」
月が不審げな顔をすると松田はニヤリと笑った。
「月くんがエロ本読んでるとこ。
 月くんが高校生のときに5日間ほど監視してたのは知ってるよね?そのときに――」
監視されていることを知っていてわざとグラビア雑誌を読んでみせたことがあった。
そんな瑣末事を松田が未だに覚えていることが不思議だった。
それも今になってそのことを揶揄するために話題にするとは――。
月は溜息を吐いた。
「――人が悪いですね。知ってるんだったらわざわざ聞かなくてもいいのに」
「でもその雑誌はあんまり好みじゃなかったみたいだね。どんなのが好みなの?」
「どうしてそんなことを聞くんですか?」
流石に月の声が硬くなった。
「ごめん。怒った?ちょっとした興味本位で、別にからかってるわけじゃないよ。
 ほら、月くんてモテるから僕、気になって」
「松田さんのほうこそ、モテるんじゃないですか?感じが今風だし、優しいから」
「あはは、そんなことないよ。だって彼女いないし」
松田は笑いながら軽く手を振り否定した。
その様子は謙遜しているふうではなく、柔和な性格が見てとれた。
「でも松田さんならすぐに見つかりますよ」
「そんなおだてないでくれよ。それより月くんはミサミサと上手くいってるの?」
「最近は殆ど会えていませんが、特に問題はないはずです」
「そういうの、いつのまにかダメになってるケース多いから気をつけたほうがいいよ。
 僕なんか昔、彼女がいたとき仕事があまりに忙しくて連絡もしてなかったら知らないうちに着信拒否されてたから」
人事のように笑いながら言うので思わずつられて笑ってしまいそうになるのを抑え、控えめの微笑に留めた。
「そうですか。気を付けます」
「まあミサミサは月くん盲愛してるから大丈夫だよね」
月はそれには何も答えなかった。
会話が途切れたので再び沈黙が流れる。月はPCに向き直って作業を再開させた。
「ところで月くんて竜崎と手錠で繋がれていたときアッチのほうはどうしてたの?」
「あっちって?」
今度は作業を続けながら松田の相手をした。
「だからアッチだよ。下の処理」
「トイレのことですか?」
「違うよ。分かっててわざとはぐらかしてるでしょ?性欲処理のこと。
 あれだけ長いこと一緒にいたわけだから、お互い抜き合ったりしてたの?」
月はまたキーボードを打つ手を止めてしまった。
「……いい加減にしないと怒りますよ」
「月くんが怒ったら恐そうだね。そういえば竜崎を殴り飛ばしてたこともあったっけ。
 あれにはビックリしたよ」
やる気が出ないと愚痴る竜崎を叱咤するため暴力に訴えたこともあった。
あの当時の自分ならそうしたであろうが、今の自分なら絶対にしないことだろう。
「松田さんを殴ったりはしませんよ……」
「ごめんね。月くん、なんだか元気なさそうだから、次長も亡くなってしまって二人きりになると何を話したらいいか分からなくなったんだ」
月の父親である次長――総一郎が死んだのはつい最近のことだった。
もし総一郎が生きていたらこうして松田と二人きりになることもなかったかもしれない。
「だからって下世話な話ばかりしないでください」
「はは、そうだよね。――でも、実は僕、知ってるんだ」
「……何を?」
今度は松田の顔が真剣になっていた。
さきほどのおどけた雰囲気はもうない。
ただならぬ気配を感じて月の声まで強張る。
「月くんと竜崎がセックスしてたこと」
「…………」
まさかとは思うが『月がキラであることを知っている』と告げられるかと思っていた。
ところが全く見当違いのことを松田はさらりと言ってのける。
月は内心安堵してよいのかそれとも腹を立てればよいのか複雑な心境に駆られた。
「監視カメラに最中の様子が映ってて、偶然モニタールームで見ちゃったんだ。
 後で見たらデータが消されてて、たぶん竜崎が気づいて消したんだと思う」
「それは……」
やっと松田が変なことばかり訊いてくる訳に気づき得心した。
だが、いったい今になって何故そんな事実を打ち明けるのか月には不可解だった。
当時のLが建設したビルの私室にどの程度監視カメラが仕掛けられていたかは今となっては知る由もないが、全ての監視データの管理はLとワタリが行っていた。
それぞれの監視データには場所によってはパスワードがかけられているか暗号化されているかで容易には見ることができないようになっていたはずだ。
その監視データもLの死と同時に全て消去されてしまったが――
「ずっと黙ってようと思ってたんだけど、つい我慢できなくなってきて――」
「その、気持ちの悪い思いをしたんじゃないですか?」
「そんなことないよ。それより、ずっと黙って秘密にしておくことのほうが辛かったなあ」
月は素直に「すいません」と謝るべきなのか迷った。
松田の表情からは別段責める様子は窺えない。
見られたのは不本意だったが別に迷惑をかけるつもりだったわけではない。
「僕は別に同性愛者というわけではないので安心してください。
 松田さんも今までと同じように接してもらえると助かります」
「ああ、分かってるよ。でなきゃミサミサと付き合うわけないもんね」
「あの、このことは……」
「誰にも言ってないから安心して」
月はあからさまに安堵の表情を浮かべた。
だが、松田のような口の軽い人間がよく今まで黙ってこれたものだと思う。

「それより吃驚したよ。まさか、あの月くんが竜崎にあんなふうにされるなんて――
 お父さんが知ったら何て言うだろうね」
目を細めて悲しげに笑うので、嫌味などではなく純粋に上司を懐かしんでいるようだった。
月はしばらく黙って俯いた。
「あのときは手錠で繋がれてて異常な状況にあったもんね。
 ましてや月くんはそれ以前に50日間も監禁されてたんだもの。
 でも、僕らもずっと本部に篭りっきりでそろそろ溜まってきてるんじゃないかな?」
「え……?」
一瞬、意味を図りかねた。
「ねえ、月くん、今度は僕としない?」
月は松田の顔をまじまじと凝視した。
表情に笑みはなく、冗談を言っている様子はなかった。
「本気ですか?僕は男ですよ」
「そんなの関係ないよ。月くんだって竜崎に抱かれて気持ち良さそうにしてたじゃないか」
松田はソファから立ち上がると月のほうへ近寄ってきた。
咄嗟に作業に使っていたPCをログオフして見られないようにする。
「それ以上近づいたら殴りますよ?」
「あれ?さっきは殴らないって言ってたのに」
「ふざけないでください」
「僕は本気だよ?そんなに拒むのなら皆に竜崎とのこと教えるけどいいの?」
真顔で松田は詰め寄ってきた。
「誰も信じませんよ。松田さんの言うことなんて」
「酷いなー月くん。それって僕に信用がないってこと?
 でも、皆も薄々感づいてたんじゃないかなー」
暴露されれば、たとえそれを誰も取り合わなかったとしても、捜査本部での心証が悪くなる。
ただでさえキラ容疑をかけられある程度は疑われているというのに、そのうえLであった竜崎と肉体関係を持っていたことを悟られるのは分が悪い。
それに松田は場の空気が読むことが下手なため、時折ぽんと本当のことを言ってしまうのだ。
松田に関する信頼度がどうであれ、案外疑念を抱かれるかもしれなかった。
「それに、実はそのときの映像データのバックアップ取ってあるんだよね。
 竜崎が消す前にメディアにコピーしておいたんだ。まだ自宅に置いてあるよ」
月の血の気が引いた。思わず目の前の松田を睨み付けてしまう。
「別に月くんを脅すために取っておいたわけじゃないよ。
 僕のおかず用に使ってるだけだから」
暢気な声で悪びれもせずに打ち明けるので月は苛立った。
唇を噛んだあと、ゆっくりと息を吐き出した。
「……分かりました。そういうことなら――。
 でも今はニアからの連絡が気になりますので事態が落ち着いてからにしましょう」
「そんなの、放っておいても大丈夫だよ。繋がらなければまた連絡してくるだろ」
そう言って松田は座っている月の肩に手をかけた。
「でも……」
「それに二人きりになれるチャンスは当分ないかもしれないんだよ」
松田は少し屈み込んで月に口付けるとシャツのボタンを外していった。
手を動かしながら口付けをよりいっそう深くしていく。
松田からは酒の匂いが強くした。
今、松田だけを殺すわけにはいかなかった。
松田だけ死ねば怪しまれる恐れがある。
また、今の段階で捜査本部全員を殺すわけにもいかなかった。
それではニアに月がキラであると教えているようなものだった。
「僕、男相手は初めてだから上手くできないかもしれないけど、痛かったら言ってね。
 ビデオで何回も見たから竜崎のやり方を真似てやってみるよ」
おぞましいことを言われて身体が強張る。
「まだ夕方ですよ。ニアから連絡が来るかもしれない。
 夜更けを待ってからでも遅くはないんじゃないかな」
できるだけ優しい声で提案した。松田をまっすぐに見つめて返答を待つ。
「いつ相沢さんたちが帰ってくるかも分からないし、それにもう止められないから」
月は内心で舌打ちする。
「じゃあせめて寝室に移るかバスルームに行きましょう。ここではちょっと……」
隣の寝室は仮眠用に使っていた。
各々が休む部屋は別に取ってあるが、月はLとしての役目もあるため主に使っているのは月だった。
「でもニアから連絡があるかもしれないんだろ?
 だったらここにいればすぐ分かるし応対もできるかも」
ニアはキラ信者からの襲撃を受け拠点を移したため、こちらからは連絡できない状態にあった。
そのため月はニアからの連絡を待っているのだが、未だに連絡は来ないままだった。
会話をしている間にも松田は月の乳首を摘んだり首筋を舐めたりいろんなことをしている。
ベルトを引き抜くと月を椅子から立たせてズボンのジッパーを下ろした。
もはや腹を括って松田の相手をするしかなさそうだった。
ただ、今度は相沢たちが突然帰ってきたりはしないかが気になり始めた。
もちろん鍵を持っていないのでいきなりは入ってこれないが、匂いで気づかれかねない。
竜崎の真似をすると言っていたが、ちっとも似てはいない。
松田は好き勝手に月の身体を弄っているようだった。
一度月を抱きしめると下着の中に手を突っ込んで性器を揉んで律儀に愛撫を繰り返していたが、やがて片方の手を背中側から入れて尻の割れ目を辿りながら探り始める。
少しは性感を煽っていたが、せめてソファに寝転ばせてくれないとただ突っ立ったままでいる自分が馬鹿みたいだった。
このまま成すがままにされるのも癪なので突き飛ばそうかと両手を松田の胸に添えてみたが結局軽く押し返すだけに留めた。
後ろの手は目的の場所を探り当て、入り口を人差し指が侵入しようとしていた。
流石に何年も受け入れていないためそこはキツかった。
圧迫感が喉までせり上がってきて気持ちが悪い。
せっかく勃ち上がっていた中心も萎えていく。
「月くんてさー、本当は特に誰も好きじゃないでしょ?
 竜崎もミサミサも、その場の流れでそうなったから相手してるだけで。
 だったら、僕とこうしたっていいよね」
松田のそんな無神経な言葉も無視した。
それでも能天気な声のせいか、それとも松田の言うとおりなのか、ともかく腹を立てる気にはなれなかった。
「僕、判るんだよね。月くんのちょっとした表情で」
「松田さんに僕の何が判るっていうんですか?」
月は不敵な笑みを浮かべた。
咄嗟に屈んで膝立ちになると、松田の指は月からするりと抜けていった。
「あっ月くん、何を?」
松田の慌てた声が上から降ってくる。
今度は月が松田のベルトを引き抜きスラックスのファスナーを下ろした。
性器を取り出して手で支えると躊躇いもなく口に咥えた。
いつか竜崎にされたのを真似て舌を動かしてみる。
口全体を使って扱くように動かすと次第に硬度を増していった。
頭上から呻き声が聞こえた。
「こういうことされるの僕初めてだよ。凄い……」
恍惚とした声になって松田はうっとりとした表情を浮かべていた。
やがて絶頂を迎えると奔出した性を月は飲み込んだ。
少しむせたがなんとか喉を下っていった。
「飲まなくてもいいのに」
絨毯を汚したくなかったのと匂いがしみついては拙いと焦ったため、不本意ながらも飲み込んだ。
当然だが青臭い味がまだ口の中に残り、喉越しは悪かった。
「松田さん、これで勘弁してもらえませんか?今ならまだ間に合いますよ」
立ち上がるとやや蔑みを込めて見下ろした。
それも一瞬のことで、すぐに唇の端に笑みを浮かべて見せる。
酔っているのだとしたら、とりあえず下半身さえ満足すればそのまま眠ってしまうかもしれない。
そんな打算があったからしてやったことだった。
月はソファ越しに上から手を伸ばしてテーブルに置いてある松田の飲みかけの缶ビールを取った。
口の中が気持ち悪いためゆすぎたかったのだ。
飲んでみると温くなって不味かったがひとまず不快感は取り除けた。
テーブルの上に缶を戻そうと上体を屈めたとき後ろから重みが圧し掛かってきた。
「嫌だよ。止めるわけないだろ。せっかくこうして触れることができたんだから。
 ずっと君とこうしたかった……」
松田は月を背中から強く抱きしめると耳に荒い息を吹きかけた。
そうすると酒臭さがよりいっそう増して暑苦しい。
「僕、ずっと月くんを見てきたから。
 確かに何を考えてるか頭の中までは判らないけど、少なくとも月くんが元気か落ち込んでるかぐらいは判るつもりだよ」
月は心の中で密かにせせら笑った。
そんなことは本人で無い限り結局のところ永遠に判るはずがない。
「じゃあ僕が松田さんに好意を持っているか嫌悪を抱いているかも判るんですか?」
「うーん、月くんは僕のこと、好きでも嫌いでもないでしょ?
 要するにどうでもいいんじゃないかな」
「そうですか?僕は松田さんのこと、人間的には好きですよ。
 善良で、弱者の視点で物事を考えられる――
 たとえ優秀でなくとも警察官にはそういった資質が必要です。
 もちろん、恋愛感情はありませんが」
「あはは。なら、僕の見方は当たらずとも遠からずなわけだ」
その間にも松田の指が再び月の胸の突起を掴み捏ねくり始める。
腰を押さえつけたまま撫で擦るように手が下肢へと滑り入ってきた。
「でも、こんなことをしてる僕を見てもまだ善良だって思うのかい?」
「……何故これまで黙ってきたのに、今になってこんなことをしようと思ったんですか?」
答えがあるまで少々間があった。
「そうだな、次長が亡くなったとき、君が号泣しているのを見て、思わず背中を抱きしめてしまったから、かな?
 君の背中から深い悲しみが伝わってきて、急に君が身近に感じられた。
 そうしたら、君の匂いや体温を感じて奥底にしまっておいたものが疼き始めたんだ」
それは嘘ではないのだろうが、おそらく最大の理由は月の父親であり松田が尊敬する上司である総一郎が死去したためだろう。
今まで総一郎という大きな存在によって抑えられてきた想いはここにきて戒めから解放されたらしい。
月はそう解釈した。
そして松田のそういった感傷的で陳腐な言葉を疎ましくも好ましくも思った。
ソファの後ろから背もたれに月を押し倒すとくの字の形に身体が曲がった。
急な身体の下降に月は驚いて声を上げた。
腹が背もたれの上側に押し付けられ息苦しい。
ちょうど逆さまに万歳をしたような格好となり、羽織っていたシャツがめくれて下がり背中が晒された。
それを狙ったように松田は月の腰に体重をかけたままシャツを脱がし袖で両腕を束ねた。
それから脱ぎかけだったズボンを下着ごと脱がすと足首にひっかかって絡まる。
松田に尻を突き出すような屈辱的な格好になり月の羞恥心を煽る。
「んっ……」
松田は月の口に指を突っ込むと十分に唾液を絡ませてから抜いた。
そのまま剥き出しの尻へと持っていかれ、結合のための入り口を解された。
前を扱かれそれが頭を擡げてくると先端から先走りが垂れるのでそれも潤滑剤として使われた。
指がもう一本増やされたとき、まるで竜崎にされているかのように錯覚した。
次第に息が上がってくる。
情欲が昇りつめる前にどうしても聞いておきたいことがあった。
「……僕のこと、キラだって思ってますか?」
「ううん。思ってないよ。僕だけは最後まで月くんがキラじゃないって信じてるから」
まるで当然であるかのようにすぐ返答が返ってくる。
「ありがとう。松田さん。こんなことをするあなたは許せないけど、嫌いじゃないよ」
それは嘘ではなかった。月なりの松田に対する好意の表し方だった。
十分解れてきた頃、松田は再び勃ち上がってきたものを孔に宛がった。
入り口に頭が埋め込まれると月の口から長い呻きが漏れた。
上体を起こされソファの背もたれに掴まらされると、松田の大きな両手に腰を掴まれた。ゆっくりと入ってくる異物に月は圧迫感で苦しくなる。
「くっ――っ…!」
やはり男を受け入れるのは並大抵ではなく、月の身体への負担を重くした。
ただでさえ睡眠不足なのにできれば身体に負担をかけたくはなかったがもうこうなってしまっては仕方がない。
逆に松田を利用してキラ容疑を晴らすことができないか考え始めていた。
なんとか全部入りきるとゆっくりと腰を揺らされた。
ソファの背もたれを持つ手が汗で滲んで滑りそうになる。
何度か慎重に抽挿を繰り返していると慣れてきたのか次第に間隔が早まってきた。
松田の片手が月の性器に寄り添うとリズムに合わせて手が上下する。
漸く快感が得られてきた頃、汗で身体全体はぐっしょりしていた。

「んっ…は……あ、あっ」
律動が激しくなると息も絶え絶えになり自分がどのくらい喘いでいるのかも分からなくなった。
「ああ……月くんっ好きだ!好きだっ……!」
松田が耳元で何か熱い息を吹きかけてきたけれど、月は喘ぐので精一杯で何も応えられなかった。
ソファに掴まる手が遂に滑り落ちて絨毯へと身体がずり落ちていく。
頭の片隅では、いつかSPKと捜査本部を始末したあと松田の自宅に忍び込んで件のメディアを回収しなければ…とぼんやり考えていた。
反復する抽挿のタイミングに合わせて自然と嬌声が漏れ出る。
「はぁっ…あ、あ、…んっ……ああ!」
いつのまにか足に絡まっていた衣服も全て脱がされていた。
素肌が絨毯の毛先に触れてちくちくする。
男が覆い被さって体中にキスを繰り返している。
身体全体が熱くて蕩けそうだった。
月が果てるとほぼ同時に松田も中で達した。
そのとき部屋にはニアからの通信が入ったことを知らせる着信音が机上のPCから流れていた。

end






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