Lが月の独房へ食事を運んできた。
トレイに食事が載っている。
ご丁寧にデザートまでついている。
床にうずくまっていた月はのろのろと首を向ける。
「あまり食が進まないようですね」
ベッドにトレイを置く。
「こんな状態じゃね」
手首を見せようにも後ろ手に手錠をしているので動かせない。
「それもそうですね」
神経質そうに匙を取ると、器用に月に食べさせる。
だがあまり食が進まず、半分も食べきれない。
「竜崎、もういいよ」
竜崎は大仰なティーセットを押して来ると、紅茶をカップに注いだ。
無機質な檻に紅茶の香りがひろがる。
「捜査はいいのか?」
月は帰るように促したつもりだった。
「大丈夫です。矢神くんは砂糖は入れますか?」
「いや。いらない」
「…それは困りましたね…もう入れてしまいました」
月はなんだかおかしくなった。
「ふ…いいよ、竜崎が飲めよ」
「いいえ。そういう訳には行きません」
竜崎は真剣な顔でカップを近づけてきた。
ひちくち飲んでみると、ひどく甘い。
一体砂糖を何個入れたのだろうか?
唇からすこし紅茶が溢れ月の首元に流れ落ちた。
竜崎は覗き込むようにして「どうですか」と聴いてくる。
「甘い」
「そうですか…」
竜崎はカップから一口あおると、味わうようにして飲み干す。
「おいしいです」
「……飲んで良いよ」
月は竜崎が飲むものと思ってぼんやりしていると、竜崎の顔が突然近付いてきた。
顎を掴まれ、無防備な唇に舌が差し込まれる。
焼けるように甘い液体が喉を滑り落ちた。
「この方が飲ませやすいです」
「りゅうざ…」
再度竜崎の顔が近寄ってきた。
予感に月が思い切り顔を背けると、そのまま竜崎は軌道を変えず、服に零れた紅茶を舐め始めた。
染みを吸い出していくように、服に染みこんだ紅茶を唾で湿らせ吸い出していく。
(神経質な癖に、何でそんな汚い事は平気なんだ)
だが、その唇が月の乳首の上にかかった。
「っ…竜崎!おい。やめろ!」
竜崎は余計に舌を服の上から押しつけ唇で挟んで刺激する。
「ゃ…やめろっ」
叫んだ月は押し殺すように息を継ぐ。
竜崎は無言で月の服をたくし上げると、直接舌で胸を愛撫し始めた。
背に腕を回し、円を描くように柔らかく乳首を舐め、指の間に挟んで親指でクリクリと先を擦る。
「あ……っ」
月はやめろと叫ぼうとするが、口を開くと喉の奥から卑猥な喘ぎ声が漏れそうになる。
体は手錠に足枷。その上にがっちりと押さえ込まれ身動きがとれない。
それまで自分で触った事もない乳首を弄られているのに、局部に血が集まるのが分かる。
「っ…ん…っん」
竜崎は胸に散々キスしやっと顔を離した。
肩を掴むと、項垂れた月の顔を上げさせ、まじまじと顔を見つめてくる。
月の睨み付ける鋭い目とは対照的に、頬は羞恥に赤らんで、うっすらと汗ばんだ肌がなまめかしかった。
はだけられた胸には既に赤いアザが何個も出来ている。
連続する刺激に耐え、解放されたと思い何か罵声を叫ぼうとした月の唇を竜崎の唇が塞いだ。
「……ん」
竜崎の舌は月の口内の甘みを舐め取るように蠢いた。
歯茎を舌先でなぞり、口蓋を舐めていく。
舌を噛み切ってやろうかと考えながらも、巧妙な刺激に月の頭は次第に真っ白になっていった。
耳に指が髪をまさぐる音がざわざわと響く。
竜崎は口の中を探索し終わると、月の唇から零れた紅茶を舐め取った。
口を解放された月は大きく息を吐き出す。
竜崎は気にせず月の髪をかき上げると耳に舌を這わせた。
「…っ…ん」
月の背に甘い電流が走り、体の一部に血が集まっていく。
「ぁ…やめろっ…」
言葉とは裏腹に快楽に身を委ねそうになる。
「月君は耳も、敏感ですね…」
耳を軽く噛んだ。
「違っ…ん、あ」
竜崎は月の髪を、ぐちゃぐちゃとかき回し、もう一度軽く口づけると、
何事も無かったような目で言った。
「じゃ、全部食べてください」
「……」
「食べないと、もっとしますよ」
仕方なくまた無理矢理食べ始める。
「竜崎、さっきのは何なんだ」
月が咎めるように訊くが
「さっさと食べて下さい」
せっつくように匙を差し出す。
結局はぐらかされてしまった。
「では一時間後に風呂に入れますから」
言い残すと竜崎は出ていった。
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おそらくきっちり一時間後に竜崎は来たのだろう。
車椅子に月を乗せシャワー室に引きずり込む。
「おい、変なことしないだろうな」
「何ですか変なことって」
不審そうに見る月を、丸い瞳が見返す。
着衣のままの竜崎は予想よりも事務的に体を洗った。
スポンジで触れるのでさっきみたいに変に興奮することもない。
少し乱暴に髪を洗う指が心地良い。
風呂から上がると、脱げない服をドライヤーで乾かす。
月は食事中以来、特におかしな行動をしない竜崎に安心した。
かなりの疑問が残るが、単なる嫌がらせだったのかもしれない。
ずるずるとベッドに引き上げられる。
「はぁ…」
「気持ちよかったですか」
「まあね」
竜崎はベッドに座ると外国映画の子供にするように額にキスをした。
「おやすみ、夜神くん」
「…竜崎、僕は子供じゃないぞ」
「嫌ですか」
妙に可愛らしく小首を傾げる。
「嫌とかじゃない、違う」
「私は嬉しいんですが」
顔を見つめながら指を囓る。
「…関係ないだろ。竜崎も寝ろよ、おやすみ」
そっぽを向くと、薄い毛布をかけられ、竜崎がベッドから離れる気配がする。
「おやすみ、夜神月」
小さく呟くと、竜崎は檻を閉じた。



小さな音をたてて檻の外の扉が開いた。
「夜神くん」
竜崎が檻の外で首を伸ばして覗き込む。
「起きてますか」
月はベッドから身を起こした。
「お風呂入りませんか」
「…ああ」
竜崎は時々月の食事だの風呂だのを世話しに来た。
風呂場に移動させられると、シャワーをかけられスポンジで洗われる。
浴槽に湯が張られていて、天井から下げられた電動の釣り椅子に座らされ浴槽に下ろされる。
ほとんど介護施設だ。
月は顎まで湯に沈み込んだ。浴槽に漬かるのは、さすがに久しぶりだ。
常に着衣の竜崎はプラスチックの椅子に腰掛けた。
少し紅潮した肌が濡れて透けている。
相変わらずびっくりした様な目で監視し続けている。
月は少し居心地が悪くなった。
「竜崎…何か話せよ」
「…そうですね…」竜崎が呟く。
だが、捜査状況は話せないので、あまり話題もない。
浴槽の入浴剤の香りがむせかえるように充満する中、沈黙が流れる。
月は重い口を開いた。
「竜崎、お前…この前…キスしたろ」
「はい、しました」
「何でだ」
「何でだと思いますか?」
巧妙に質問を投げ返してくる。
「…分からないよ」月は湯に鼻の下まで沈み込んだ。
竜崎が立ち上がった。
ぺたぺたと近寄ってくると、月の顔を大きな手で捕まえる。
「何」
月が敵意を込めて睨み付ける。
舌を入れてきたら今度こそ噛み切ってやるつもりだった。
竜崎は睨み付けてくる月を黒い瞳に映し、詳細に検分するようにじっと見つめた。
「竜崎」
月が耐えきれず声を出すと、手が離れる。
竜崎は棚から瓶を手に取ると中身を手に取り、月の首に付けた。
何だかぬるぬるする液を塗り伸ばされる。
「なにこれ…」
月が顔を顰める。
「マッサージジェルです。血栓が出来るとまずいですから」
首の後ろに指を突っ込み肩に撫で下ろす。
「…胸、絶対触るなよ。耳も。足もダメだ」
「はいはい」
気のない返事が返ってくる。
だが、ぬるぬると肌を滑る手が気持ち良い。
月は心地よくて半分目を閉じた。
しばらく竜崎の手が動いていたが、ふと首を抱え込んだまま指が止まった。
見上げると又真っ黒い大きな瞳が見つめている。
「…終わり?」
「何でだか、分かりますか」
「?…」
密室で妙な目つきで見つめてくる竜崎に、月は胸がざわつくのを感じた。
目にありったけの力を込めて睨み付ける。
「今度やったら舌噛むからな」
竜崎の指に力がこもった。
まずい、と月が思う間にゆるゆると顔が近づいてくる。
月は顔を動かそうとして身体を動かした。
香りの良い湯がゆらゆらと揺れる。
竜崎の紅い唇が近づいてくると鼻に噛み付いた。
「なっ…」
驚いて目を瞑った月の瞼をずるりと舐めていく。
「ひっ…何すんだ、バカ」
目を見開いて見ると竜崎は相変わらず貫くような視線を送ってくる。
頬がいつもより赤い。
「キスは舌、噛まれますから」
「当たり前だろ」
月は身体をばたつかせた。
湯がしぶきを上げる。
竜崎は月の顔を掴んだまま、顔中を調べるように見ながら静かな声で続けた。
「男に犯されるという拷問もあるんですよ。
…屈辱的でしょうね。
特に夜神くんは…ひどく…汚したいという欲望に駆られますね…。
完璧すぎる美というものは汚したい気持ちを引き起こすのだと、私もやっと解りました。
これは収穫でしたね…」
月はゾッとした。
気丈に振る舞ってはいるが、今力ずくで来られたら敵うわけが無い。
言い終わると竜崎は顔から指を放した。
ぺたぺたと又椅子へ戻り腰掛ける。
「安心して下さい。その方法は採りません」
安心したが、月は理由を聞いて良いものか迷った。
「…じゃあ、他の方法って訳か」
「ええ、私は月くんが好きですから」
竜崎は親指を囓ると事も無げに言い放った。
-----------------------おわり-----------------------





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