「ライト、また少しやせたんじゃないか?」
雨に濡れる町並みを窓辺から見下ろし、月は死神の声に振り向かず口だけで笑う。
「あまり動かないからね。食欲もわかないんだ」
伸びた前髪を避けて、窓に映る自分の顔を見る。頬骨がはり、年齢とともに丸さを失った顔があった。
世界は変わって来ていた。
だが、どこかへ置いて来てしまった情熱がいまだ自分を苛む。
もうごまかせないほど過去の幻影に囚われている。
記憶の中の『彼』を反芻し、甘い熱に胸を焦がした。
「…後悔は、しないはずだったんだけどな」
窓に映った月が泣いているように見えたが、振り返った彼は笑っていたので
リュークは無関心を装い林檎をねだった。